お気に入りの器が欠けたり割れたりしたとき、「もう使えない」と諦めてしまうこともあるかもしれません。贈り物として誰かからもらい、大切にしてきたもの、家族との食卓を彩ってきたもの、旅先で一目惚れして手に入れたもの——そんな思い出の詰まった器を捨てるのは、誰しもためらうものです。そんなときこそ注目したいのが、日本の伝統的な修復技術「金継ぎ(きんつぎ)」です。

金継ぎは、割れや欠けを漆(うるし)で接合し、その上から金や銀などの金属粉を施して仕上げる技法。単に修復するだけでなく、その痕跡を意匠として生かし、「景色」として楽しむ文化を育んできました。器が歩んできた歴史そのものを、新たな美しさへと昇華させる伝統技術です。
金継ぎ修理を依頼する際のプロセス

金継ぎを依頼する際には、まず、修理したい器の状態を確認し、修理可能な範囲を把握することが重要です。多くの事業者では、事前に写真を送って見積もりを受けられるため、割れ方や破片の有無を明確にしておくと、その後のやり取りがスムーズに進みます。
次に、修理方法を選びます。伝統的な本金・本漆を使う方法から、より手軽な簡易修理まで、工房によって対応が異なります。修理期間や費用も変わるため、事前に問い合わせておくのがおすすめです。
依頼の際は、器を直接持ち込むほか、郵送での受付を行っている事業者も多くあります。工房に足を運んで相談できる場合もありますが、郵送なら自宅から手軽に依頼できるため、忙しい方や遠方の方にも利用しやすい方法です。仕上がり後の受け取り方法や発送時の梱包についても、あらかじめ確認しておくと安心です。
金継ぎ修理にかかる費用や期間

金継ぎにかかる費用や期間は、器の状態や破片の数、そして選ぶ修理方法によって大きく異なります。
簡易的な修理であれば、数千円から1万円前後での仕上がりが見込めますが、本漆や純金粉を用いた本格的な金継ぎでは、1万円から3万円程度を目安となることが多いです。破片の多さや、絵付け・質感に合わせた繊細な仕上げをご希望される場合は、追加で費用がかかることがあります。
修理期間は、簡易修理でおよそ1〜2週間が目安です。一方、本漆による本格修理では、漆の乾燥に時間を要するため、3〜6ヶ月ほどかかるのが一般的です。季節や湿度によってさらに日数を要する場合もあるため、依頼の際はスケジュールに余裕を持っておきましょう。まずは事前に写真を送付し、器の状態を把握してもらった上で見積もりをとっておくと安心です。
金継ぎ修理が依頼できるおすすめ事業者13選
1.金継ぎ暮らし(東京都)


「金継ぎを、暮らしに。」をコンセプトに、持続可能で丁寧な暮らしを提案している金継ぎ教室・サービスです。自由が丘や六本木などに教室を展開し、本漆を使った本格的な金継ぎから初心者向けの簡易修理まで幅広く対応しています。
使用する道具は食品衛生法に準拠しており、修理後も安心して器を使い続けることができます。修理の受付やキットの販売、動画講座などを通じて、金継ぎ文化の普及にも力を入れています。
地域 : 東京都目黒区
依頼方法 : 配送 / 店舗持込
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2.金継ぎ撫日子(東京都)


「ひびを景色に」という言葉を大切にし、壊れた器を唯一無二の意匠としてよみがえらせる金継ぎ工房です。主宰の桐原かほりさんは、美術大学でデザインを学び、写真家を経て金継ぎの道へ。
本漆や純金、銀粉を使った丁寧な修復にこだわり、器と向き合うことで持ち主の想いにも寄り添います。器に新たな景色を与えることで、ものを大切に使い続ける暮らしの価値を伝えています。
地域 : 東京都府中市
依頼方法 : 配送
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3.TABITOTE(東京都)


「TABITOTE」は、東京都西多摩郡にある本漆を用いた伝統的な金継ぎで器を丁寧に修復する工房です。京都市立芸術大学大学院で漆工を学んだ職人が手がけ、確かな技術で割れや欠けを美しくよみがえらせます。
陶磁器や漆器はもちろん、ガラスや花瓶など幅広い修理に対応。金や銀に加え、赤・黄・緑など色漆を使った仕上げも可能で、器の魅力を引き出す修復を行っています。壊れた器を再び暮らしに取り入れることで、「ものを大切に使い続ける価値」を伝えています。
地域:東京都西多摩郡瑞穂町
依頼方法:配送 / 店舗持込 / 出張引取
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4.ちいん(神奈川県)


「ちいん」は、神奈川県川崎市を拠点に、日常使いの器やガラスを手軽に直す金継ぎサービスを行っています。食品衛生法に準じた合成漆を用いた簡易金継ぎを専門とし、比較的手頃な価格と短い修理期間で仕上げられるのが特徴です。日常のうつわに寄り添いながら、一つひとつ丁寧に対応しています。
地域:神奈川県川崎市中原区
依頼方法:配送 / 店舗持込 / 現地修理
5.金継ぎGoldenJoinery(神奈川県)


「金継ぎGoldenJoinery」は、神奈川県鎌倉市を拠点に、全国各地から金継ぎの依頼を受けています。日本の伝統工芸に関心を持つ海外からの相談も増えており、口コミや紹介を通じて著名人からの依頼も寄せられています。
各地で金継ぎ教室やワークショップを開催し、企業や雑誌とのコラボレーションも実施。実用性と美しさを兼ね備えた本漆の魅力を日常に取り入れる提案を行い、器や家具、道具のメンテナンスにも力を注いでいます。
地域:神奈川県鎌倉市
依頼方法:配送 / 店舗持込 / 出張引取
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6.金継ぎ・KISSAKO(神奈川県)


「金継ぎ・KISSAKO」は、神奈川県鎌倉市を拠点に陶磁器の金継ぎや漆工品の修理を手がけています。「喫茶去(きっさこ)」とは、「楽にして、お茶を一杯召し上がれ」という意味の禅語。その言葉が示す“心の余裕”を日々の暮らしの中に取り戻してほしい——そんな思いから、名付けられています。
金継ぎだけでなく、銀継ぎ・漆継ぎ・共直しにも対応。破片がそろっていない場合でも修理が可能です。忙しい毎日を送る人々に、暮らしを穏やかに彩る漆の魅力を提案しています。
地域:神奈川県鎌倉市
依頼方法:配送
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7.【日本産漆金継ぎ】漆の恵み(千葉県)


「【日本産漆金継ぎ】漆の恵み」は、千葉県松戸市に拠点を置き、日本産漆と自然素材を使った金継ぎを行っています。日本の気候風土に合う漆を選ぶことで、堅牢で長く使える仕上がりを実現しています。
また、漆の国内消費量を増やし、漆掻きの技術とともに文化を次世代へつなぐことを目指し、全工程に国産の漆を採用。木粉や麻布、珪藻土由来の粉などの自然素材を組み合わせながら、ひとつひとつの器に美しい景色をよみがえらせています。
地域:千葉県松戸市
依頼方法:配送 / 店舗持込
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8.転寝工房(うたたねこうぼう)(山梨県)


「転寝工房(うたたねこうぼう)」は、山梨県北杜市の作業場を拠点に、木のトレイや器、漆工作品などの製作を行っています。また、店主は神奈川県の自宅でも陶磁器の補修(金継ぎ)を手がけており、両地を行き来しながら活動しています。
本漆で下地を整え、金消し粉などを蒔いて仕上げる伝統的な技法で、ひとつひとつ丁寧に修復を実施。素材の個性を生かしたものづくりと繕いを通して、長く使い続ける喜びを伝えています。
地域:山梨県北杜市
依頼方法:配送
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9.金継ぎ松本(岐阜県)


「金継ぎ松本」は、岐阜県を拠点に活動しています。美濃地方を中心に、骨董店や陶芸作家、個人からの依頼を受けて金継ぎを行っており、自宅の土間スペースでは教室も開催。漆にまつわるワークショップを通じて技術を伝えながら、日本古来の修復技法である金継ぎによって古い器に新たな命を吹き込み、使い続ける喜びを広めています。
地域:岐阜県
依頼方法:配送
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10.創作美術漆器 西本(石川県)


「創作美術漆器 西本」は、石川県加賀市に拠点を構え、茶道具の製作・補修をはじめ、陶器や漆器の金継ぎ修理を手がけています。数十年にわたる実績をもとに、確かな技術と審美眼で大切な品をよみがえらせてきました。
骨董品から日用品、美術品まで幅広く対応し、使い捨てではなく使い続ける文化を守り続けています。修復を通じて、受け継がれてきた日本の手仕事の精神と、美を大切にする文化を次世代へつないでいます。
地域:石川県加賀市
依頼方法:配送
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11.Kintsugi K(大阪府)


「Kintsugi K」は、大阪府阿倍野区を拠点に、日本の伝統技法である金継ぎを本漆で手がけています。
「壊れた部分をデザインとして捉え、新たな命を吹き込む」という考えのもと、一つひとつの器と真摯に向き合っています。
修理の際は、依頼者と相談しながら仕上げを決め、金継ぎ教室を通してその魅力を伝えています。暮らしの中で器を使い続けることの価値を、大切にしています。
地域:大阪府阿倍野区
依頼方法:配送
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12.金継ぎ 邂逅 / Sakiho Shimizu(香川県)


「金継ぎ 邂逅」は、香川県高松市の自宅兼工房で本漆による金継ぎ修理やレッスンを行い、これまでに約2,000件以上の修理を手がけています。屋号には、「傷の形を生かし、器に新たな表情を生み出す——そんな邂逅(思いがけない出会い)を届けたい」という思いが込められています。器と向き合いながら、持ち主の想いにも寄り添う金継ぎを通じて、日常にあたたかい時間をもたらしています。
地域:香川県高松市
依頼方法:配送
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13.宵の継ぎ堂(岡山県)


「宵の継ぎ堂」は、岡山県を拠点に、器やコップ、お皿などの金継ぎ修復を手がけています。破片がそろっていない場合でも対応可能で、ガラス製品の軽い欠けなども丁寧に直しています。仕上げは金(平極粉)・銀・アルミ粉などから選べ、それぞれの器の雰囲気や用途に合わせた修復方法を提案。ひとつひとつの状態を見極めながら、再び暮らしの中で息づくよう丁寧に仕上げています。
地域:岡山県
依頼方法:配送
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器を直し、使い続けるために

金継ぎは、単なる器の修復にとどまらず、その器が持つ物語や歴史を尊重し、新たな美しさとして受け継いでいく日本の文化です。簡易的な修理から、本格的な本漆・本金による修復まで、事前に専門家へ相談し、最適な方法を選ぶことで、大切な器は日常の中で再び輝きを取り戻すでしょう。
壊れた器を手放す前に、金継ぎという選択を考えてみてください。
もう一度その器を手に取る喜びが、きっと暮らしの中に戻ってくるはずです。
















