廃材に新たな価値を、オンワードが挑む循環型ものづくり
サステナブルへの関心が高まる中、企業の廃棄物削減への取り組みが加速している。株式会社オンワードコーポレートデザインは2024年、アップサイクルプロジェクトの実施件数を前年比175%に伸ばし、廃棄物の価値転換における新たな可能性を示している。

アップサイクルとは、廃棄物に新たな価値を加えて別の製品に再生するプロセスだ。同社は、廃棄物削減だけでなく、環境意識の向上や持続可能な社会の形成を目指して、以下のような取り組みを展開している。

2024年に注目すべき事例の一つが、漂着ペットボトルを再生した素材「UpDRIFT®」の活用だ。ドトールコーヒーショップ、FANCL、八王子学園で新ユニフォームとして採用され、環境問題の「自分ごと化」を促す取り組みとなっている。

特筆すべきは、単なる素材のリサイクルに留まらない取り組みだ。従業員や学生たちが実際にビーチクリーン活動に参加することで、環境問題への理解を深める機会を創出している。これは、モノの循環に「体験」という付加価値を組み込んだ新しいアプローチと言える。


また、使用済みユニフォームの再活用では、繊維リサイクルボード「PANECO®」を用いて、オフィス家具や店舗什器の製作に取り組んでいる。TDKでは、カフェスペースやワークスペースのテーブルやパーテーションとしてアップサイクルし、従業員の帰属意識向上やコミュニケーションの活性化に寄与している。一方、FANCLでは、レジカウンターやロゴサインに再利用することで、ブランドストーリーとサステナビリティのメッセージを顧客に伝えている。

さらに、地域連携によるプロジェクトも進展している。ANAグランドスタッフの使用済みユニフォームを、北海道月形町や月形刑務所、月形高等学校と協働してキャリーオンバッグやトートバッグにアップサイクルした事例がその一例だ。さらに、九里学園高等学校では不要になった学生服を来校者用スリッパに転換するなど、地域社会との関係性を深めながら廃棄物削減に貢献している。
「ただアップサイクルするだけでなく、そこにストーリー性や体験という価値を組み込むことが、今年の特徴的な動きだった」と同社イノベーションデザインDiv.サステナブル推進課の原之将は語る。今後も、顧客やサプライヤーと連携し、業界全体で資源の無駄を減らし、持続可能な社会を実現する取り組みを進めていく考えだ。