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廃棄貝殻を新たな資源に、環境配慮型素材「SHELLTEC」

甲子化学工業株式会社は、水産系廃棄物の貝殻を再利用した、日本初(同社調べ)の新素材「SHELLTEC」を発表した。廃棄物として処理されるホタテ貝殻をリサイクルし、新たな素材としての価値を生み出すことで、環境負荷の軽減を目指している。

日本では年間約20万トンものホタテ貝殻が廃棄されている。この大量の廃棄物は環境問題の一因であり、有効活用が長年の課題であった。そこで、プラスチック製品を扱う同社は、廃棄貝殻を資源とした新素材「SHELLTEC」を開発した。

ホタテ貝殻に含まれる炭酸カルシウムは、建材、セメント、プラスチックの原料として利用されている。この特性を生かし、同社は廃棄貝殻に廃棄プラスチックやコンクリートを組み合わせ、強くて地球に優しい素材を開発した。これにより、新品のプラスチックを100%使用する場合と比べ、CO2排出量を最大36%削減。さらに、曲げ強度は約33%向上した。また、石灰岩由来のエコプラスチックに比べ、最大20%のCO2削減が期待できる。

SHELLTECはホタテ貝殻だけでなく、炭酸カルシウムを主成分とするムール貝や牡蠣の貝殻からも生成可能。さらに、企業や自治体と連携し、貝殻本来の役割である「守る」を軸に、さまざまな製品への素材展開を進めていく。

SHELLTECを使用した製品は、さまざまな分野での活用が期待されている。以下は代表的な3つの製品である。

HOTAMET(ホタメット)

「HOTAMET」は、廃棄ホタテ貝殻から作られたヘルメット。生物模倣(バイオミミクリー)の考えに基づき、貝殻の特殊なリブ構造をデザインに取り入れた結果、通常よりも約33%高い強度を実現。また、CO2排出量を最大36%削減している。「HOTAMET」は、大阪・関西万博専用のオリジナルデザイン/仕様にアップデートされ、大阪・関西万博開催期間中に防災用ヘルメットとして導入される予定である。

さらに、自転車用「HOTAMET」も開発されており、国が推奨する安全規格であるSGマークを取得。欧州統一規格CEや、米国消費者製品安全委員会が認定するCPSCの安全基準もクリアしている。

HOTATETRAPOD(ホタテトラポッド)

「HOTATETRAPOD」は、北海道猿払村のホタテ廃棄貝殻を砂の代替素材として使用することで、本来必要な砂の消費量を最大50%まで抑えたサステナブルなテトラポッドである。国連環境計画(UNEP)が警鐘を鳴らす「サンド・クライシス」に対応し、砂不足への解決策を提供する。

また、生物模倣(バイオミミクリー)の考えに基づき、ホタテ貝殻から着想を得たリブ構造をデザインに採用。これにより、海藻がつきやすくなり、魚介類の餌場となるだけでなく、海中の炭素を吸収するブルーカーボンの増大を実現。海にも地球にも優しい環境配慮型テトラポッドとなっている。

HOTABENCH(ホタベンチ)

「HOTABENCH」は、同素材をコンクリートに混ぜ合わせることで製造されたサステナブルなベンチだ。大阪・関西万博の、社会課題の解決や未来のくらしを実現するためのプロジェクト「Co-Design Challenge」に選定され、会場内に5脚設置される予定だという。

「HOTABENCH」の設計には、リサイクルによって生み出されるテクスチャやホタテのようなシルエットを取り入れ、見る人・座る人に新たな循環資源の未来を提案する。また、大阪・関西万博の後は、ホタテの貝殻を提供している北海道猿払村をはじめ、全国の公園への設置を計画。地域に還元し、持続可能なまちづくりにも貢献する。

「SHELLTEC」は、廃棄されるホタテ貝殻を資源に変え、環境負荷を低減しながら新たな価値を生み出す新素材だ。同社は、この革新的な取り組みを通じて、持続可能な社会の実現を目指している。

甲子化学工業 | Koushi Chemical Industry

SHELLTEC シェルテック | KOUSHI


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