万博会場に“廃プラ製”の演台と司会者台、建設現場の資材を再生
2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の会場で使用される演台と司会者台が、建設現場から出る廃プラスチックを原料として製作された。手がけたのは、建設会社の株式会社鴻池組と、3Dプリント技術を強みとする有限会社スワニーだ。

この演台・司会者台は、夢洲に建設中の「EXPOナショナルデーホール」に納品され、すでに式典で使用されている。注目すべきはその素材と製造方法にある。資材の梱包などに使われていたポリプロピレン(PP)バンドを建設現場から回収し、それを再生プラスチックとして加工。スワニーが保有する大型のペレット押出式3Dプリンターで一つひとつ製作された。

建設現場では、梱包材や養生材として多くのプラスチックが使われるが、その多くは焼却による熱回収、いわゆるサーマルリサイクルにとどまっている。そうした現状に対して、鴻池組は建設中に発生する廃プラスチックを再資源化=マテリアルリサイクルし、新たな製品に生まれ変わらせる取り組みを続けてきた。今回の演台製作は、その取り組みの一つの成果と言えるだろう。

回収したPPバンドは、株式会社TBMがペレット状の原料に再加工。そのうえで、スワニーが設計と3Dプリントを担った。演台と司会者台には、50%以上がリサイクルPPペレットが使用され、残りは形状や強度を補うための複合材が加えられている。さらに、大阪・関西万博の公式ロゴやデザイン要素を施すために、旭化成のセルロースナノファイバーフィラメント材を活用し、意匠性と環境配慮を両立させた。
この演台・司会者台は、3月23日(日)に開館した大阪ヘルスケアパビリオンや、同27日(木)の警察・消防専門部隊の発足式などで実際に使用されており、万博期間中もさまざまな式典で活躍する予定だ。

鴻池組の担当者は、「今回は一品生産だったため3Dプリンターという手段をとりましたが、今後も案件に応じて柔軟な発想でマテリアルリサイクルに積極的に取り組んでいきたい」と意欲を見せる。
また、現場事務所の担当者は「現場で作業員と根気よく集めた廃プラを原料に、3Dプリンターで資源循環できる演台を製作するということこそがこの取り組みの一番の根幹であり、多様な形の製品を廃プラから作れるということを未来社会の実験場という万博の場でアピールしたいと考えています。」と語った。
設計を担ったスワニーは、長年にわたる製品設計や3Dプリンティングの実績を活かし、地産製造や地元商店街との連携プロジェクトなど、地域密着型の事業も展開している企業だ。今後も3Dプリンターという柔軟な製造手段を通じて、廃材の価値を引き出す取り組みが期待される。
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