東京・千駄ヶ谷にユナイテッドアローズの新店舗「UNITED ARROWS LTD. STORE」が2025年7月にオープン。オープン当初は、規格外品やリペア品、サンプル品といった通常の販売ルートから外れた商品が販売され、終了日未定の企画として注目を集めた。

2025年3月、ユナイテッドアローズは本部オフィスを東京都渋谷区千駄ヶ谷の「ヒューリック将棋会館千駄ヶ谷ビル」へ移転した。1階には、公益社団法人日本将棋連盟が運営する道場兼カフェ・ショップ「棋の音」が入居しており、地域に開かれた文化交流の拠点として機能している。今回、新たにオープンした「UNITED ARROWS LTD. STORE」は、その隣接スペースに設けられたもので、展示やイベントの開催を通じて、同社の取り組みを発信していく場となっている。
この店舗は、ユナイテッドアローズが全社的に取り組むサステナビリティ活動「SARROWS(サローズ)」の一環として位置づけられている。「SARROWS」とは、「Sustainability」と社名「ARROWS」を掛け合わせた造語であり、持続可能な社会の実現に向けた活動全体を象徴する言葉として2020年に掲げられた。
以来、同社は5つのテーマと16の重要課題(マテリアリティ)を定め、環境・社会・経済の各側面から具体的な取り組みを推進している。さらに2022年には、2030年に向けた3つの重点目標が設定された。「Circularity(循環するファッション)」「Carbon Neutrality(カーボンニュートラルな世界へ)」「Humanity(健やかに働く、暮らす)」というテーマのもと、それぞれに対応する数値目標が設けられている。
今回オープンした「UNITED ARROWS LTD. STORE」は、「Circularity」の実践を目的とした取り組みの一環である。店舗では、規格外品やリペア品、サンプル品を新たな価値ある商品として提案することで、商品の廃棄率を極小化することを目指している。

店舗で取り扱われるのは、生産や流通の過程で傷が付いたり、基準を外れたりしたことで通常は販売されない規格外品や、それらを丁寧に修理したリペア品、さらに開発段階で制作されたサンプル品など。いずれも基本的には新品であり、返品品や二次流通品は対象外とされている。こうした商品は、企業の循環型の取り組みを具体化するものとして、生活者に向けて新たな選択肢として提案されている。
今後は、ユナイテッドアローズの各ブランドによる展示会やイベントの開催も予定されており、単なる物販の場にとどまらない情報発信・交流の拠点としての展開が期待されている。


店舗面積は約100平方メートルで、店内の一部壁面や什器には、環境への配慮として国産ヒノキの間伐材からつくられた木毛セメント板を使用している。

企業によるサステナビリティの取り組みが重視されるなか、ユナイテッドアローズが実店舗という形で循環型社会の実践に踏み出したことには、大きな意義がある。売れ残りや規格外といった“見えづらい廃棄”に目を向け、これまでにない流通の選択肢として提案されたこの店舗は、従来の販売スタイルを見直すきっかけにもなっている。いわゆるアウトレットとは異なり、商品を再評価し、資源として活かし直すことを目的とした取り組みである点が、このプロジェクトに新たな価値をもたらしている。
■店舗情報
店名:UNITED ARROWS LTD. STORE (ユナイテッドアローズ エルティーディー ストア)
住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷1-18-5 ヒューリック将棋会館千駄ヶ谷ビル 1F
営業時間:平日12:00~18:00 *土日・祝日は休業