唐津発、999個限定。漂着ごみから生まれたアップサイクルキーホルダー「The Whale」。
海洋ごみによる環境問題が深刻化するなか、地域で回収された漂着プラスチックを活用して製作されたアップサイクルキーホルダー「The Whale」が注目を集めている。
同商品は「Precious Plastic 唐津」プロジェクトの一環として企画され、唐津市内の工房で一点ずつ手作業で成形されている。限定999個のシリアルナンバー付きで、数年かけて段階的に展開される。単なる製品を超えて、環境保全・教育・循環型社会の構築という複数の視点から、日常生活の中で社会課題と向き合うきっかけを提供する取り組みだ。

1980年代以降、世界の海洋プラスチックごみは10倍に増加し、年間100万羽以上の海鳥と10万頭の海洋哺乳類が命を落としていると言われている。 2050年には、海洋プラスチックごみの量が魚を上回ると予測され、国境を越えた地球規模の課題として、削減に向けた国際的な取り組みが求められるようになった。

佐賀県唐津市でも、海洋ごみの影響は無視できない問題だ。唐津は美しい海岸線をはじめ、漁業など海と密接に関わる地域資源に恵まれており、海洋環境の悪化は観光や地域産業にも影響を及ぼすおそれがある。こうした課題に対し、地域密着型のアプローチで取り組んでいるのが「Precious Plastic 唐津」だ。このプロジェクトは、世界56カ国・1,100以上の団体が参加するオランダ発のオープンソースプロジェクト「Precious Plastic」の理念を受け継いでいる。

「Precious Plastic」では、2023年時点では56カ国、1,100以上の団体が参加。これらの団体は、循環型社会の実現に向けた多様な取り組みを行なっており、中でもリサイクルしてきたプラスチックの合計は、約140万キログラムに及ぶ。
そのグローバルネットワークの一端として、唐津でも地域密着型のリサイクル活動を展開し、海洋ごみの削減と循環型社会の構築を目指している。海洋プラスチックのアップサイクル製品「The Whale」は、こうした取り組みを具体的に実践した一例だ。

同商品には、専用タグが付属する。このタグは、環境省が推進する生物多様性保護の国際指標「OECM(保護地域以外で保全が図られている地域)」に認定された「自然共生サイト」で活動する団体が発行しており、生物多様性保全への実効的な取り組みに基づいた証となる。
また、この商品にはNo.001〜999までのシリアルナンバーが付けられており、数量限定で展開されるロングラン企画として、数年かけて少しずつリリースされるよう設計された。
No.001〜006は、北西九州で回収された廃ペットボトルキャップを原料に、唐津市の工房で一つひとつ手作業で成形された。これらは、海洋ごみの問題に取り組む「おがわプロジェクト」の一環として、小川小中学校の児童生徒のもとへ届けられた。素材が姿を変えて戻るという体験は、循環の価値にふれる機会となった。キーホルダーは、Precious Plastic Japan Teamのオンラインストアで販売され、即日完売となった。



No.007〜028は、長崎県対馬由来のプラスチックを原料としている。大阪・関西万博の「BLUE OCEAN DOME」における対馬ウィーク(2025年6月16日〜22日)に合わせ、ZERIジャパン・対馬市が主催する企画と連動し、協賛企業サラヤの公式通販サイトで抽選プレゼントとして展開された。

現在、シリアルナンバーはNo.027まで発行されており、今後も段階的にリリースが進められていく予定だ。

「The Whale」は、廃プラスチックをただのごみとして扱うのではなく、地域の手で新たな命を吹き込む取り組みの一端だ。教育や環境保全、循環型社会の構築といった複数の視点を内包しながら、持続可能な未来への意識を日常に届けるプロダクトとして展開されている。手に取るひとつのキーホルダーが、身近なアクションを通じて社会課題とつながる体験を生み出している。
Precious Plastic Karatsu プラスチックリサイクル、アップサイクル