お気に入りの服が色褪せたり、シミや汚れが目立つようになったりすると、「もう着られない」と感じてしまうことがあります。しかし、長く愛用してきた思い出のある服ほど、簡単には手放したくないものです。

このような場面で注目されているのが、日本の伝統技術に根ざした「染め直し」です。「染め直し」では、色褪せた衣類を新たな色で染めることで、もう一度命を吹き込むことができます。黒染め・草木染め・藍染などの技法により、服は新しい表情をまとい、ふたたび日常に馴染む一着へと生まれ変わります。
染め直しを依頼する際のプロセス

染め直しを依頼する際は、まず、衣類の状態を確認し、染色が可能な素材かどうかを把握します。綿・麻・シルクなどの天然素材は染まりやすい一方、ポリエステルなどの化学繊維は染まりにくい場合があります。多くの事業者では事前に写真を送って見積もりを依頼できるため、素材や色褪せの程度を整理しておくと、その後のやり取りがスムーズです。
次に、染めたい色を選びます。最も利用されているのは黒染めで、どんな服でも深みのある黒へと仕上がります。草木染めや藍染は、天然染料ならではの柔らかく奥行きのある色合いが魅力です。また、柿渋染めは独特の風合いに加え、古くから抗菌性があるといわれている点も特徴です。事業者によって対応できる染色方法や色が異なるため、あらかじめ確認しておくと安心です。
依頼の際は、衣類を直接持ち込むほか、配送での受付にも対応している事業者が多くあります。工房に足を運んで相談できる場合もありますが、配送であれば自宅から手軽に依頼できるため、忙しい方や遠方の方にも利用しやすい方法です。仕上がり後の受け取り方法や返送時期も、事前に確認しておくと安心です。
染め直しにかかる費用や期間

染め直しにかかる費用や期間は、衣類の種類や素材、そして選ぶ染色方法によって大きく異なります。
費用の目安としては、Tシャツなどのシャツ類やパンツ・スカート類で5,000円〜8,000円程度、ジャケットやコートなどの大きな衣類では8,000円〜15,000円程度で仕上がることが多いです。黒染めや化学染料を使った染め直しは比較的リーズナブルな価格から対応可能ですが、草木染めや藍染などの天然染料を使った染色は、手間がかかる分、費用が高めに設定される傾向にあります。
納期の目安は、黒染めや化学染料の場合で2週間〜1ヶ月ほど。工程が多い草木染めや藍染では3週間〜1ヶ月半程度かかることがあります。染め直しは、洗浄・染色・乾燥・仕上げといった複数の工程を経るため、一定の時間が必要です。繁忙期や衣類の種類によってはさらに日数がかかることもあるため、まずは事前に写真を送り、状態を確認してもらったうえで見積もりを取っておくと安心です。
染め直しは、大切な服にもう一度息を吹き込み、その思い出をこれからもそばに残す方法です。時間や費用をかけてでも、愛着のある一着が再び手元で輝く喜びを、きっと日常の中で感じられるでしょう。
染め直しが依頼できるおすすめ事業者7選
1. KUROZOME REWEAR FROM KYOTO【K】(京都府)


「KUROZOME REWEAR FROM KYOTO【K】」は、京都府京都市を拠点とする株式会社京都紋付が展開しています。同社は100年以上、日本の伝統的な正装である黒紋付だけを染め続けてきた歴史を持ち、世界一の黒を追求し続けてきました。
光を吸収することでより深い黒を生み出す独自技法「深黒加工」を開発し、伝統の技術と革新の発想を組み合わせながら、シミや汚れで着られなくなった衣類を黒染めによって新たな装いへとよみがえらせています。
地域: 京都府京都市
依頼方法: 配送 / 店舗持込
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KUROZOME REWEAR FROM KYOTOの公式サイト
2. 染め屋 貴久 KIKYU(大阪府)


大阪府池田市を拠点とする「染め屋 貴久 KIKYU」は、印度茜、柘榴、印度藍など6種類の草木の天然染料を使用した染め直しを提供しています。草木染め・藍染め11色の中から希望の色に染めることができ、化学染料にはない独特の深く優しい色合いが魅力です。
また、天然染料を使った染め体験や染めアイテムの販売も行っており、“自然の色を暮らしに取り入れる”という提案を続けています。
地域: 大阪府池田市
依頼方法: 配送 / 店舗持込
3. 薩摩悠希 ほるとの木 (和歌山県)


和歌山県を拠点とする「薩摩悠希 ほるとの木」は、柿渋染めを専門とした染め直しを手がけています。「自然が生み出すあたたかさを大切にし、捨てられてしまうものにもう一度命を吹き込みたい」という思いのもと、古くから衣食住に使われてきた柿渋での染め直しを行っています。
洋服の質感や素材、形を活かしながら仕上げられる点が魅力で、「あるものを長く、大切に使うことで生まれる豊かさを届けたい」という姿勢を大切に活動しています。
地域: 和歌山県
依頼方法: 配送 / 店舗持込
4. 染め直し屋(大阪府)


大阪府東大阪市の染工場「染め直し屋」は、昭和13年創業のクリーニング店としての実績に、新たに開発された染色加工技術を組み合わせて生まれました。色褪せて着られなくなった衣類を染め直し、気軽に再生できる仕組みを提案しています。
衣類には値段だけでは測れない思い入れがあるという考えを大切にし、長年の経験をもとに、安心して任せられるメンテナンスを提供しています。
地域: 大阪府東大阪市
依頼方法: 配送 / 店舗持込
5. 馬場染工業(京都府)
京都府京都市を拠点とする「馬場染工業」は、明治三年創業の黒染めの老舗工場です。長年培ってきた黒染めの技をもとに、「自慢できる一着を届けたい」という思いで、さりげないおしゃれを後押しするものづくりを続けています。
オリジナルの黒である「秀明黒」と、やわらかい印象の「自然黒」の2種類から選べるほか、全体を黒に染めるだけでなく、元の生地を一部残すなどのカスタムにも対応しています。
地域: 京都府京都市
依頼方法: 配送
6. 藍染め屋 aiya(富山県)
富山県魚津市を拠点とする「藍染め屋aiya」は、藍染を専門とした染め直しを提供しています。江戸時代から続く伝統技法「天然灰汁発酵建て」による藍染めを採用しており、化学薬品を一切使わない、身体にも環境にもやさしい染色法が特徴です。藍で染めた生地には抗菌・防虫・保温といった効果があるとされ、その実用性も魅力のひとつです。
また、休耕田を活用して藍染の原料となる蓼藍(タデアイ)の栽培にも取り組み、将来的には種まきから栽培、染色までを一貫して行う藍染め屋を目指しています。こうした活動を通じて、人と人が心地よくつながり続けられる社会づくりに貢献したいと考えています。
地域: 富山県魚津市
依頼方法: 配送 / 店舗持込
7. 藍染屋 AFURIBLUE BROTHERS.(神奈川県)
神奈川県伊勢原市を拠点とする「藍染屋 AFURIBLUE BROTHERS.」は、阿夫利大山に霞がかる青の原風景に魅せられ、その美しさを表現したいという思いから生まれた藍染ブランドです。「いつの日か、この地のシンボルカラーとなり、仲間から愛される存在に」という願いを込めて立ち上げられました。「藍は最高のビンテージ」という価値観を大切に、唯一無二の藍染めを通して、暮らしに特別な色と時間を届けています。
地域: 神奈川県伊勢原市
依頼方法: 配送 / 店舗持込
藍染屋 AFURIBLUE BROTHERS.の公式サイトはこちら
染め直しは、単なる衣類の修復ではなく、その服が持つ物語や歴史を尊重し、新たなかたちで受け継いでいく日本ならではの文化です。黒染めから草木染め、藍染、柿渋染めまで、費用や納期はさまざまですが、事前に専門家へ相談し最適な方法を選べば、大切な服は再び日常で息を吹き返します。
用途や予算に合わせて事業者を選び、色褪せてしまった一着に、もう一度愛着を取り戻してみてはいかがでしょうか。











