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築160年の古民家材を活かす、小田急不動産の循環型住宅提案

古民家の解体が進む中、価値ある構造材を現代の住まいに活かす動きが広がっている。小田急不動産は、2025年5月に神奈川県足柄上郡開成町に平屋のモデルハウスを開設した。このモデルハウスでは、新潟県阿賀町で約160年前に建てられた古民家の構造材を、梁として再利用している。

この取り組みは、古材を再活用した新築住宅を提案する「KATARITSUGI(かたりつぎ)」プロジェクトの第1号物件にあたる。同プロジェクトでは、日本各地の古民家の良質な構造材を小田急沿線の住宅に再利用できる仕組みを構築し、住文化の継承と循環型社会への貢献を図っている。

日本には約102万戸の古民家が存在するとされ、これらは1950年以前に建てられた、防火構造でない木造一戸建住宅を指す。そうした伝統的な建築は、少子高齢化や相続の問題により継承されず、空き家となる例が増えている。

小田急不動産は、地域とのつながりを大切にする仲介事業を通じて、古民家の古材を別の地域で活用し、所有者の想いや歴史を次の世代へ繋ぐストーリーを生み出せるのではないかと考えた。この考えに基づき、「未来の子ども達の為に持続可能な循環型建築社会を創造する」を理念とする全国古民家再生協会との連携のもと、古材を新築住宅に循環利用する仕組みを検討。2025年4月にプロジェクトを正式に始動させた。

同プロジェクトで使用された古材は、新潟県阿賀町の築約160年の古民家由来のものだ。約160年間、雪深い地域の住まいを支えた構造材を、モデルハウスのリビングに大梁として再利用している。

このモデルハウスでは、古材との馴染みも良い国産木材を積極的に使用し、古き良き日本の美意識を現代の住まいに継承した。家族の時間が広がる開放感のある土間、つながりを育む古材が見守るリビング、学びの場としてのしつらえ、そして自然のある風景を取り込んだ設計により、四季の移ろいを感じられる空間をつくり上げている。

さらに、古材を使用しながらも現代の住宅性能基準を満たす設計がなされている。耐震性能では「設計住宅性能評価」および「建設住宅性能評価」において耐震等級2を取得しており、震度6強〜7程度の揺れにも耐える水準にある。加えて、建築物省エネルギー性能表示制度BELSにて「断熱性能6」を満たし、一年を通じて快適な室内環境を実現。「エネルギー消費性能」については☆4つを満たし、エネルギー効率にも優れている。

また、古材の活用は廃棄物の削減やCO2排出の抑制にもつながり、環境負荷の軽減が期待される。本モデルハウスに使用された古材を含む木材全体の炭素貯蔵量は、杉の木41本分に相当するという。

同プロジェクトでは、古材の素材的価値だけでなく、その背景にある物語や文化的価値の継承にも重きを置いている。地域に根ざした家屋の物語を次世代へ伝えるため、使用された古材の背景や建築時期、使用材、暮らしの様子などを記録した「家史(いえし)」を用意した。これは、再生された住まいのルーツを未来へ語り継ぐための一冊であり、訪れる人々が古民家の物語を知るきっかけとなる。

こうした取り組みは、地域経済の活性化や環境保護にもつながる倫理的消費(エシカル消費)としての意義を持つ。

同プロジェクトが提案するのは、過去と未来をつなぐ、古くて新しい暮らし方である。古民家から受け継いだ構造材が、神奈川の新しい住まいで再び家族の暮らしを支える。そこには、素材や風景に宿る記憶を大切にし、次の世代へ語り継ぐ暮らし方への想いが込められている。

小田急不動産株式会社 – 公式サイト

一般社団法人全国古民家再生協会 | 循環型建築によって持続可能な建築物として未来の子どもたちへ伝えます。

KATARITSUGIについて | KATARITSUGI


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